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・ HANA誕生の『No No Girls』―プロデューサー◎、番組◎、事務所〇
・『timelesz project -AUDITION-』(タイプロ)―プロデューサー◎、番組◎、事務所◎
・JO1・INI・ME:I誕生の『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズ―プロデューサー(視聴者)◎、番組◎、事務所〇
・NEXZ誕生の『Nizi Project Season2』―プロデューサー◎、番組△、事務所〇
・MAZZEL誕生の『MISSIONx2』―プロデューサー◎、番組△、事務所〇
・&TEAM誕生の『&AUDITION』―プロデューサー×、番組×、事務所◎
・ILLIT誕生の『R U NEXT』―プロデューサー×、番組×、事務所◎
・NCT WISH誕生の『NCT Universe: LASTART』―プロデューサー〇、番組×、事務所◎
・PRIKIL誕生の『Who is Princess?』―プロデューサー×、番組×、事務所×
・XY誕生の『YOSHIKI SUPERSTAR PRIJECT X』 ―プロデューサー△、番組×、事務所×
・FANTASY BOYSが誕生した『少年ファンタジー』―プロデューサー×、番組×、事務所×
オーディション番組好きの筆者は、2025年1月19日の日本テレビ系「シューイチ」で、MCの中山秀征がガールズグループ・HANAとそのプロデューサーのちゃんみなに述べた言葉が、的を得ているな、と思った。
「こんなに熱いプロデューサー、初めて見た。感情が前に出てるでしょ、ちゃんみなさんの。だから、みんなが納得するんだよね。出ている子たちが言われている、いいことも、そうじゃないことも、本気で答えるからさ」(番組詳細は2025年1月19日付「HANA『シューイチ』で『Drop』披露/ ちゃんみなが7人を選んだ理由/ HANA人気順、1位MOMOKA」を参照)。
オーディション番組が人気を得て盛り上がると、デビュー前から多数のファンを獲得できる。ただし、所属事務所に力があると、オーディション番組が不発でも、その後は強力なプロモーションで挽回可能だ。
そこで、成功したオーディション番組と、不成功だった、あるいは失敗したオーディション番組の特徴を、デビュー組を売り出す事務所のプロモーション力・メディアへの影響力とともに、整理してみよう。ただし、あくまでも、筆者の個人的な感想・見方なので、偏りがあるかと思うが、ご容赦頂きたい。
HANA誕生の『No No Girls』―プロデューサー◎、番組◎、事務所〇
HANAを誕生させたオーディション番組「No No Girls」の成功の主因は、プロデューサーのちゃんみなの力量だった。
歌もラップもダンスもできる彼女がプロデューサーで、事務所は中小でガールズグループの実績はないがSKY-HIが率いるBMSGだから、実力のある子が集まったし、ちゃんみなの彼女たちへの真摯な向き合いも、視聴者の共感を呼んだ。
『timelesz project -AUDITION-』(タイプロ)―プロデューサー◎、番組◎、事務所◎
現在Netflixで配信中のtimeleszの追加メンバーを選出するオーディション・プロジェクト「timelesz project -AUDITION-」(タイプロ)も大人気だ。
こちらは、timeleszの人気に加え、菊池風磨を筆頭に彼らがプロデューサー的な立ち位置で、候補生たちと真摯に向き合う姿が感動を呼んでいる(timeleszメンバー・プロデュースの5次審査については2025年1月18日付「『タイプロ』Ep12―堂本光一降臨/ 5次審査の通過人数判明、佐藤勝利チーム4人の通過者予想」などを参照)。
もちろん、STARTO(旧ジャニーズ)というブランド力で、質の高い候補生が集まったし、現役STARTO人気アイドル先輩も登場するし、番組はMnet「PRODUCE」(プデュ)シリーズと同様の、バラエティー的面白さも備えている。というか、プデュを参考にしているように思える場面も、幾つかあった。
JO1・INI・ME:I誕生の『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズ―プロデューサー(視聴者)◎、番組◎、事務所〇
プロデューサーが番組に登場しない「PRODUCE 101 JAPAN」シリーズでは、視聴者投票制で、番組も韓国で大成功したシリーズの日本版でバラエティー要素があって面白かったし、吉本関係の事務所で信頼もあったので、日本で成功できた。JO1を誕生させた日プ無印、INIを誕生させた日プ2、ME:Iを誕生させた日プ女子、すべてが成功した。
事務所LAPONEは当初は力がなく、JO1が主要音楽番組に出演できるようになるまでにかなりの時間を要したが、2グループ目のINIからは、比較的容易に出演できるようになった(「NHK紅白歌合戦」以外)。
NEXZ誕生の『Nizi Project Season2』―プロデューサー◎、番組△、事務所〇
では、成功でいなかった、あるいは失敗したオーディション番組の特徴は何か。上記の成功の要素がなかった番組だ。事務所に信頼がなく良い候補者が集まらなかったり、プロデューサーに魅力がなかったり、番組がつまらなかったり、というパターンだ。
まずは、第1弾だけ上手く行って、第2弾があまり上手く行かなかった例を挙げてみよう。
NiziUが誕生した「Nizi Project」シーズン1は、K-POP大手JYPのJ.Y.Park自らがプロデューサーを務めたことと、物珍しかったことで興味を引いた。
だが、同じ内容でアメリカ版「A2K」でVCHAを誕生させ、さらに日本で「Nizi Project Season2」でNEXZを誕生させるにつれ、ちょっと飽きてきて、あまり盛り上がらなくなった。
また、NiziUの人気のピークがプレデビュー曲「Make you happy」だったこと、韓国デビューの成果が微妙だったことも、デビュー後のJYPのプロデュース力・プロモーション力に、一抹の不安を感じさせた。
MAZZEL誕生の『MISSIONx2』―プロデューサー◎、番組△、事務所〇
SKY-HIがBE:FIRSTを誕生させた「THE FIRST」も、プロデューサー・SKY-HIの真摯な候補者への向き合いが共感を呼んで成功した。
しかし、第2弾のMAZZELを誕生させた「MISSIONx2」は、最初にデビューメンバーを顔見せさせるという致命的ミスがあり、内容も「THE FIRST」と似ていて飽き気味だったので、盛り上がらなかった。
&TEAM誕生の『&AUDITION』―プロデューサー×、番組×、事務所◎
つまらなかったオーディション番組の典型は、HYBEのオーディション番組だ。ENHYPENを誕生させた2020年の「I-LAND」は、HYBEとCJ ENMの合弁時代のものであり、番組制作は「PRODUCE」シリーズを大成功させたCJ ENMのMnetが手掛けたので、残酷だったが興味を引いた。
&TEAMを誕生させた「&AUDITION」は、プロデューサーは出演せず、番組はつまらなくて盛り上がらなかった。しかしHYBEという強い事務所なので、デビュー決定後はHYBEの剛腕プロモーションが奏功し、スタートダッシュの鈍さをデビュー後2年で挽回し、人気獲得に成功した。
ILLIT誕生の『R U NEXT』―プロデューサー×、番組×、事務所◎
同様に、HYBEがCJ ENMとの合弁を解消した後のILLITを誕生させた「R U NEXT」もつまらなかったが、デビューしたILLITはウォンヒ(ウォニ)という超カワイイ逸材メンバーと「Magnetic」という神曲に恵まれ、もちろんHYBEの剛腕プロモーションも発動され、デビュー作が世界的大ヒットという大成功を収めた。
NCT WISH誕生の『NCT Universe: LASTART』―プロデューサー〇、番組×、事務所◎
K-POP大手・SMのNCT WISHを誕生させた日本のオーディション番組「NCT Universe: LASTART」も、番組的にはつまらなくて盛り上がらなかった。
しかし、プロデューサーのBoAと事務所・SMは日本デビューでの人気獲得は困難と判断し、さっさと日韓同時デビューと韓国活動に舵を切って、大成功した。NCT WISHは韓国で新人賞を受賞するに至った。
PRIKIL誕生の『Who is Princess?』―プロデューサー×、番組×、事務所×
日本テレビ「シューイチ」で毎週紹介されたにもかかわらず大コケしたオーディション番組が、ガールズグループ・PRIKILを誕生させた「Who is Princess?」だった。プロデューサーは不在、視聴者投票制なし、番組はつまらない、で全く盛り上がらなかった。
また、デビュー後も、所属事務所の韓国FNCは、HYBEと違って、日本でテレビ番組をはじめとする主要メディアへの影響力に乏しく、プロモーション力もなかった。何一つ成功につながる要素がなかったため、必然的にPRIKILは埋もれたままで、ひっそりと事実上の活動終了となった。
PRIKILの人気メンバーだったNANAはその後、韓国SBSのオーディション番組「UNIVERSE TICKET」に出演させられ、ガールズグループ・UNISとして再デビューを果たした(事務所FNCは、NANAが再デビューしたグループ・UNISの利益配分を受け取ることができる)。
XY誕生の『YOSHIKI SUPERSTAR PRIJECT X』 ―プロデューサー△、番組×、事務所×
「YOSHIKI SUPERSTAR PROJECT X」は、バンドのメンバー選出の部分は良かったが、ボーイズグループ選出の部分は、大丈夫だろうか、と思わせた。
そもそも、超有名人だがボーイズグループの門外漢で、日本に住んでもいないYOSHIKIをプロデューサーに据えた時点で、バンドはともかく、ダンス&ボーカルグループについては、デビュー後の成功に懐疑的な見方が浮上していた。また、参加者は、YOSHIKIという人物やその音楽性に賛同できる者に限定された。
プロデューサーが出演して参加者と真摯に向き合った他のオーディション番組に比べて、プロデューサーのYOSHIKIと参加者の距離が、物理的にも心理的にもかなり遠かった。
デビュー後も、プロデューサーのYOSHIKIは遠いアメリカに住んでいて多忙で、日本の所属事務所はボーイズグループで成功した実績がなく、誕生したXYは、実力はあるものの、厳しい環境に置かれた。
その後、XYは手越祐也を迎え、地上波冠番組が放送されて、話題になったが、番組終了までに新曲が出せず、終了直後のツアーに手越が不参加という、段取りの悪さで、不安要素は残った。
サブプロデューサーの手越が提案することを、運営(事務所・レーベル)がタイムリーに実現できるのかなど、課題は多い。テレビ番組にはなかなか出演できないので、まずは曲を増やしてフェスにどんどん出るべきなのだが…。手越が匙を投げ出さないか心配だ。
FANTASY BOYSが誕生した『少年ファンタジー』―プロデューサー×、番組×、事務所×
FANTASY BOYSが誕生した韓国MBCオーディション番組「少年ファンタジー」は、筆者個人的には、韓国のオーディション番組なのに、スキル不足の参加者もデビュー組に含まれるという、衝撃をもたらし、デビュー後もトラブルが続いた。
名目上のプロデューサーは(G)I-DLEのソヨンをはじめとする、人気アーティストたちだったが、どうやら彼らは制作会社に忖度しなければならなかったようだ。どう考えても音痴の参加者に、信じがたい良い評価を与えて、「ダンスを習いたてにしては上手」という、意味不明の説明をしていた。
後でわかったが、制作会社は同じ企業グループ内の中小事務所に練習生を抱えていて、その練習生を番組に送り込んで、名目上のプロデューサーらに忖度させていたようだ。
名目上のプロデューサーはいたが、実際にはデビューメンバーは、100%視聴者投票で決定された。視聴者がビジュアル重視だったのか、番組が得票数を操作していたのかは分からないが、筆者個人的には唖然とした部分もあった。
その後、デビューしたFANTASY BOYSは、1位のユ・ジュンウォンが(制作会社と同じ企業グループの)事務所との契約トラブルで離脱、中国人メンバーのソウルも中国に帰国していつまでも戻って来ない、という騒動に見舞われた。
そのうち、一部メンバーは同じ制作会社が手掛ける別のオーディション番組に出演させられた。
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デビューを目指す若者は、わらにでもすがりたい気持ちかもしれないが、出演するオーディション番組やデビューの際の所属事務所については、よく見極めるべきだ。
特に、韓国の中小事務所だと、デビュー前の育成期間中に事務所が負担した費用を、デビュー後の稼ぎから差し引かれて返済する精算制度があるため、事実上給料なしの期間が長く続くことも珍しくない。やめたくてもやめられない、“奴隷契約”状態だ。
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