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・NENEは普通だったらパクリ疑惑で猛抗議かと思われたが、ヒップホップの『BEEF』だった
・『BEEF』を仕掛けた動機は、パクリ疑惑での憤慨に加え、売名行為だったかも(個人的感想)
・SKY-HIのアンサー・ソング『0623FreeStyle』の興味深いリリック(個人的感想)
女性ラッパーのNENEがちゃんみな、HANA、SKY-HIをディスるラップ曲「オワリ(OWARI)」で“BEEF”(ラップ詞による口喧嘩)を仕掛けたところ、SKY-HIが2025年6月25日に“アンサー・ソング”となる「0623FreeStyle」を、YouTubeのSKYHICHANNELに公開した。お見事だった。
筆者はヒップホップに疎かったが、今回「BEEF」というラッパー文化について、勉強させてもらった。
NENEは普通だったらパクリ疑惑で猛抗議かと思われたが、ヒップホップの『BEEF』だった
筆者はヒップホップに疎かったため、女性ラッパーのNENEが2025年6月20日に公開した、ちゃんみな、HANA、SKY-HIに対する攻撃的なラップ曲「オワリ(OWARI)」のミュージックビデオ(MV)には、仰天した(2025年6月21日付「ラッパーNENEがちゃんみな、HANA 、SKY-HIを批判する楽曲『オワリ(OWARI)』リリース、BEEFか?」を参照)。
歌詞を文字通りに解釈して、ちゃんみなにパクられたと感じたNENEが本気で怒って猛抗議しているのかと思った。普通だったら、ちゃんみなとSKY-HIが、パクリを否定し、もしかしたら名誉棄損で訴えるかもしれないと思った。
だが、ヒップホップに「BEEF」(ラップ詞で互いに攻撃し合う口喧嘩)という文化があることを知った。
冷静に考えたら、楽曲のサウンドをパクった、パクられたの実証は、難しいことが多い。世の中に楽曲が多すぎて、別の曲と部分的に似たサウンドが登場することは、よくある。
『BEEF』を仕掛けた動機は、パクリ疑惑での憤慨に加え、売名行為だったかも(個人的感想)
NENEがちゃんみなとSKY-HIに「BEEF」を仕掛けたきっかけは、自分の曲がパクられたように感じて抗議したかったからかもしれない。
だが、より重要な動機は、言ってしまえば、パクリ疑惑にかこつけた売名行為だったかもしれない。
正直、筆者はNENEという女性ラッパーの存在を、今回の騒動で初めて知った。
ちゃんみなやSKY-HIがNENEが先にリリースした楽曲の一部をパクった可能性があると騒ぎになれば、知名度が上がって得をするのはNENEだ。また、万一本当にパクられていれば、水面下の交渉で、解決金ももらえるかもしれない。
NENEが仕掛けた『BEEF』にSKY-HIが応戦―普通なら社長に相応しくないリリックもラッパーの『BEEF』ならOK
今回、NENEが仕掛けた「BEEF」のアンサーソング「0623FreeStyle」(歌詞付き)を公開したのは、SKY-HIだった。
ちゃんみながプロデュースしているHANAは、SKY-HIが率いるBMSGの子会社B-RAVEの所属だから、会社トップのSKY-HIは彼女たちを守るべく、自ら矢面に立ったのだろう。
SKY-HIのアンサー・ソングの歌詞と、イントロのアドリブのセリフは、SKY-HIやちゃんみなやHANAやBMSGのBE:FIRSTをはじめとするアーティストらのファンにとっては、痛快で、わが意を得たりだっただろう。
筆者はファンというほどではないが、彼らに頑張ってほしいと軽く応援している立場だ。割とフラットにSKY-HIの歌詞とアドリブのセリフを見た率直な感想は、さすがだな、痛烈だな、面白いな、という部分が大半だった。
一部の過激なリリックには、社長たる者がそこまで言っていいの?天狗になっていると思われないかな?と感じたが、これはあくまでも「BEEF」バトルでのラップ曲の、ラッパー独特の攻撃的な歌詞だから、容認される、との結論に達した。
SKY-HIのアンサー・ソング『0623FreeStyle』の興味深いリリック(個人的感想)
以下、SKY-HIのアンサー・ソング「0623FreeStyle」(歌詞付き)の興味深かった部分の感想を、述べておきたい。
正式な歌詞が始まる前のイントロのアドリブっぽいセリフの「これ、俺もやったほうがいいやつ? やっていいの、これ?」は、BMSGの日高光啓社長がラッパー・SKY-HIに切り替わる寸前の、ためらいが表れていて、面白かった。
NENEは売れてないが、SKY-HIのBMSGはBE:FIRSTの大成功で大金を稼いでいる。この格差に、NENEはぐうの音も出ないはず、と思わせたのが、以下のリリックだ。普通の会話だと、ファン以外には嫌味で天狗になっていると思われかねないが、ラッパーの「BEEF」のラップ詞だから許される。
「プライドが乗った船がバナナ?」「フライト中の俺はファーストクラス」
「だせぇ振りを踊るお前とこっちは世界一のコレオグラフ」
「テレビに媚び売るお前とお願いされてやっと出てる俺
NENEとMVの堀田監督が、売名行為で今回の「オワリ(OWARI)」で「BEEF」を仕掛けたことを感じ取っているリリックが、以下だ。
「寄んなハイエナ」
「汚ねぇ売名アルバム出るなら買ってやるよこのプロモーション頑張って」
「お前もだよ堀田わかってんな?誰に引き金引いたか聞いてっか?」
NENEがちゃんみなが書いたHANAの「Burning Flower」の一部が自分の曲をパクっていると感じて怒っているらしいことに対する、SKY-HIの返答が、「お前が郷ひろみとスプリットしたら喜んでくれてやるよミリオン」というリリックだ。
たとえば、HANAの「Burning Flower」の歌詞の中に「あちちちち」という部分があるが、同様のフレーズとしては、さかのぼれば、郷ひろみの「GOLDFINGER ‘99」(1999年)の歌詞の中に「A chi, chi a chi」というくだりがあった。
スプリット(spilit)は分割すなわち分け合うことなので、仮にアイデア提供料金をもし払うとしたら、NENEと郷ひろみの両方に払ってやるよ、という言い分だ。裏を返せば、何が本当のパクリか特定するのは難しい、ということだ。
NENEはSKY-HIに対して、「子供騙した金で食べる寿司は美味いか?」と嫌味リリックを書いていたが、SKY-HIは「子どもに夢を見さすのもわかるがその夢を叶えさすのは俺の方」
と言ってのけた。これがSKY-HIのBMSGでの使命なのだ。
ラッパーとしてのプライドを持っているNENEが「お前らはpops」とのリリックを書いていたが、SKY-HIは自分のポジションを「HIPHOPにRAPを借りてる以上リスペクトを払う俺POPSの意匠」と述べている。
また、ヒップホップの本場はアメリカで、日本のラッパーは本物ではないとの引け目を感じているらしいのが、SKY-HIの「極東のアジアからこんにちは」「どのみち俺等同じ穴のムジナ」というリリックの部分だ。
NENEが攻撃的な「BEEF」を仕掛けたことに対する、SKY-HIの率直な感想が集約されていると思われるリリックが「悪いことはいいけどダセェ事すんな」だった。お見事!
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