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・中国は2016年以来、非公式『限韓令』でK-POP大規模公演、韓国人アーティストの番組出演などを禁止
・2025年に方針転換―中国本土で韓国人ボーイズG公演許可→大規模合同コン『DREAM CONCERT』許可
・日本ではK-POPアーティストや公演の選別が厳しくなった→K-POP事務所は中国市場に期待したいはず
・中国の規制緩和に楽観しすぎは禁物←K-POPアイドルビジネス・推し活と中国当局の理念には相いれない部分も
中国が2016年以来、非公式ながら堅持してきた「限韓令」、つまり韓国の音楽、ドラマ、映画などを禁止または制限する政策を、正式発表なしに、緩和し始めた模様だ。
K-POP大手事務所は中国本土での大規模公演を熱望しているが、まずは、メンバー全員韓国人のボーイズグループ・EPEXの5月31日の中国福州で単独公演が許可された。
さらに、韓国芸能制作者協会が主催する大規模合同コンサート「DREAM CONCERT」が、2025年9月26日に中国海南省のキャパ4万人規模のスタジアムで開催されることが決定した。これは画期的だ。
ただし、過去の例から、中国当局の理念とK-POPアイドルビジネス・推し活には相いれない部分もあると思われるので、楽観しすぎは禁物だろう。
中国は2016年以来、非公式『限韓令』でK-POP大規模公演、韓国人アーティストの番組出演などを禁止
中国は、2016年に在韓米軍のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)の配備に反発して、韓国の音楽、ドラマ、映画などのコンテンツを禁止または制限する、いわゆる「限韓令」を、正式に発表することなく導入し、維持してきた。
このため、K-POPの中国本土での公演の開催は、小規模なものしか中国当局に許可されなかった(注: 中国本土とは異なる香港やマカオであれば可能)。また、事実上、K-POPアーティストの中国のテレビ番組への出演の許可は、韓国籍でない場合に限られた。
2025年に方針転換―中国本土で韓国人ボーイズG公演許可→大規模合同コン『DREAM CONCERT』許可
しかし、2025年に入ると、少しずつ流れが変わってきた。韓国人K-POPアーティストの中国本土での公演が、許可されるようになってきた。
この背景には、アメリカでトランプ2次政権が発足した途端に、中国と関税大幅引き上げと報復関税の応酬となったことで、米中関係および中国経済の悪化が懸念され始め、中国が韓国や日本などの近隣諸国との関係改善・強化に傾きつつあることも、影響していると推察される。
2025年4月には、韓国国籍の3人組ヒップホップグループ・HOMIESが中国ツアーを開催し、韓国人アーティストのジェジュンも重慶でファンミーティングを開催した。
4月29日には、韓国C9エンターテインメント所属の、メンバー全員が韓国籍の8人組ボーイズグループ・EPEXが、アジアツアーの一環として、中国・マカオや台湾・台北での公演に続き、5月31日に中国福州で単独公演を開催すると発表した。
2021年デビューのEPEXは、デビュー後早い時期から中国のメディアのインタビューを受けるなど、積極的に中国のファンを増やすために頑張ってきた。2025年1月には上海と成都でファンサイン会を開催し、ついに5月の中国福州でのコンサート開催が実現した(中央日報の2025年4月29日配信の記事)。
そしてついに、中国本土での大規模K-POPコンサートの開催が決まった。
韓国芸能制作者協会は2025年4月30日、1995年から毎年開催しているK-POP大規模合同コンサート「DREAM CONCERT」を、2025年9月26日(金)に中国海南省のキャパ4万人規模の三亜スポーツスタジアム(Sanya Sports Center Stadium)で開催すると発表した(聯合ニュース英語版の2025年4月30日配信の記事などを参照)。出演アーティストのラインナップは今後発表される。
そうなると、韓国大手事務所の関心事は、次は人気K-POPアーティストの中国本土での大規模公演が許可されるかどうかだろう。
日本ではK-POPアーティストや公演の選別が厳しくなった→K-POP事務所は中国市場に期待したいはず
K-POPオタクなら知っているが、2023年のK-POPの音盤(フィジカルアルバム)バブル期に、SEVENTEENとStray Kidsのアルバム売上競争などで、大きな役割を果たしたのが、「中華バー」と呼ばれる、中華圏の金満オタクだった。中華バーは、日本のファンの想像をはるかに超える財力と熱意で、K-POPの推しのアルバムを爆買いしていた。
日本では、2024年後半くらいから、K-POPブームに一巡感が出始めた。2024年8月10・11日に埼玉・ベルーナドームで開催予定だった「DREAM CONCERT WORLD IN JAPAN 2024」は、(おそらく高額チケットの販売不振で)中止になった。日本のファンは無制限にお金を落としてくれるわけではなかった。
2025年になると、米グラミー賞主催団体が「2025年はJ-POPブーム」との予想レポートを出し、4月12・13日に東京ドームで開催された韓国SBSの人気音楽番組の公開収録公演「SBS INKIGAYO LIVE IN TOKYO」では、スタンド席の空席が目立った。
日本でK-POPアーティストや公演への選別が厳しくなって、ビジネスが伸び悩んできたこともあり、K-POP事務所にとって、中国の「限韓令」緩和は大歓迎だろう。
中国の人口は日本の10倍超で、有望な大規模市場だ。中国でビジネスチャンスが大幅に増えるなら、日本活動はやや手薄でも構わない、くらいに思っているかもしれない。。
中国の規制緩和に楽観しすぎは禁物←K-POPアイドルビジネス・推し活と中国当局の理念には相いれない部分も
ただし、中国の方針は、これまでのように、突然厳しい方向に変わる可能性もある。
2021年前半には韓国Mnetの人気サバイバル・オーディション番組「PRODUCE」(プデュ)の中国版の「創造営2021」が大人気となったが、その後中国当局は行き過ぎたアイドル推し活を問題視し始めた。
2021年8月27日に、中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は、「無秩序」なファン文化の取り締まり強化策(「ファンコミュニティーの混乱に対する管理を強化する通知」)を発表した。具体的には、ネットでのアイドルグループや個人芸能人の人気ランキングの禁止、未成年のネット上の投げ銭規制、投票権を得るために特定の商品を買わせるキャンペーンの禁止などだ。
また、2021年9月2日には、中国の放送規制機関である国家広播電視総局(国家ラジオテレビ総局)が、アイドル育成番組(オーディション番組)の放送禁止や、女っぽい男性芸能人(男性の化粧など)の排除などの、エンタメ産業規制強化策を発表した。
K-POPアイドルやアイドルオタクには、中国政府が掲げる理念と相いれない面が多いようだ。
したがって、K-POP事務所やK-POPアイドルは、中国で大規模公演が許可されるようになっても、その後また規制がかかるようになる可能性もあるので、中国本土で大規模公演でグッズ込みで稼ぎまくれる、などと楽観しすぎるのは禁物だろう。
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【著者略歴】
・元サラリーマン(市場調査アナリスト)。最終学歴では経済学(統計学含む)を専攻。元日本証券アナリスト協会検定会員。
・2016年よりジャニオタ・ブログ執筆開始。2017年末よりK-POP中心の雑食&音楽好きオタクの当ブログ開始。
・ピアノ履修歴は計20年超(現在はほとんど弾かない)。
・アマチュア・バンド活動歴あり(ジャズ・フュージョン、ロック、ポップス)。