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・なぜSM買収を?―グローバル展開する上でK-POPでの自社の規模を大きくすべきと考えた。反対論もあった
・イスマン氏からSM株式を平和に買い取れると思ったが、予想外の熾烈な買収戦になってしまった
・アーティストやファンを苦しませて、眠れないほど悩んだ。申し訳なかった
・HYBEの今後の目標―大きさの問題でなく無視できない存在になる、アメリカで存在感のある企業に
HYBEの創業者で現在取締役会の議長かつプロデューサーを務めているパン・シヒョク氏が、2023年3月15日にソウルプレスセンター国際会議場で開催された「HYBE バン・シヒョク議長招待寬勳(クァンフン)フォーラム」、HYBEの今回のSM買収もしくはSM経営権をめぐってとった行動および撤退についての経緯や心境などについて語った。
(なお、同氏のハングル表記は방시혁で苗字の語頭はpの音だから「パン」と発音するが、英語ではBang Sihyukと表記するので「バン」とカタカナ表記されることもある)
なぜSM買収を?―グローバル展開する上でK-POPでの自社の規模を大きくすべきと考えた。反対論もあった
いつから、そしてなぜSM買収を考えるようになったのかについて、パン議長はこう述べた(以下、引用部分はKstyleの2023年3月15日配信の「HYBEバン・シヒョク議長、SM買収中止の理由明かす…アーティストやファンに謝罪も『眠れないほど悩んだ』」を参照)。
「HYBEがSMの買収を考え始めたのは、(中略)2019年頃だ」「2回のオファーを断られた」「(HYBE)内部では賛否両論があった。賛成意見は、(中略)グローバル成長の動力としてK-POPにおける規模を大きくする必要があるということで、反対意見は、その資金ならグローバル市場でより未来的に、革新的に使ったほうがいいという意見だった」
つまり、グローバル展開する上で、K-POPでの規模の力学を考えたから、SM買収で会社の規模を大きくしておくべきとの考え方があった、ということだ。
その一方で、パン議長が反対意見として述べたことは、現在HYBEファンがSM買収から撤退して良かった、と思う理由に近いだろう。つまり、SM買収にお金を使うよりも、HYBEにとってグローバル市場で将来もっと役立つことに使ったほうがいい、というものだ。
イスマン氏からSM株式を平和に買い取れると思ったが、予想外の熾烈な買収戦になってしまった
今回SM買収に動いたきっかけについて、パン議長はこう説明した。「突然イ・スマン元総括プロデューサーから連絡があって、持分の購入意向を質問された」「(HYBE社内で)以前買収を反対していた要素がかなり消え、今なら買収してもいいと思って決めた。イ・スマン元総括プロデューサーの持分を平和に買収できると思った」
そして、SM買収から撤退するまでの経緯について、パン議長はこう述べた。「市場がヒートアップし、思った以上に熾烈な買収戦は僕達も予想外のものだった。ずっとSMについて考えてきたので明確な価値はあるけど、ある時その価値を超えたと思った。その時から悩み始めた。最後まで買収すべきか議論が始まった。HYBEの株主の価値を毀損し、市場の秩序を揺るがしてまで、戦争と考えてまで入るわけにはいかないと結論づけた」
Kakaoが対抗してSM株公開買い付けに動き、買収合戦が激化したことは、HYBEにとって想定外だったようだ。それでも、許容範囲を超えた価格で買収を続けることはできない、という引き際はしっかり決めていて、泥沼の抗争からいち早く撤退できたは良かった。
アーティストやファンを苦しませて、眠れないほど悩んだ。申し訳なかった
パン議長はSMとSMのアーティストへのリスペクトを、このように示した。「BoAさんが20周年記念コンサートを開催した。まず『おめでとう』と伝えたい。K-POPをここまで導くことにおいて、事務所がとても大きな役割を果たしたのは事実だ。しかし、(中略)事業の中心になって仕事を全うし、産業全体をリードしたのはアーティスト」
また、パン議長はKakaoとの抗争の過程で、アーティストやファンを不安な気持ちにさせたことについて、このように詫びている。
「アーティストたちは不安な中でも本業を忠実にこなし、ファンもその場でアーティストを支えて応援した。Kakaoも僕たちも、アーティストによりいい環境を提供したいと思って買収を始めたが、実際の過程ではK-POP、アーティスト、ファンに配慮できなかったと思う」
「マネジメントをしている人間としてとても悲しかった。まず、申し訳なかった。僕たちの本質はアーティストとファンの幸せなのに、ここまで彼らが苦しむ環境になるのは、本当に正しいのかと寝れないほど悩んだ。この場で、申し訳なかったと伝えたい」
このような発言をするパン議長は、冷徹な企業経営者ではなく、アーティストやそのファンのことをちゃんと理解しているプロデューサー・ミュージシャンであり続けていることを、うかがわせている。だからこそ、パン議長はHYBEの最高経営責任者(CEO)の職務は別の人物(パク・ジウォン)に譲り、取締役会の議長、という役職に転じたのだろう。
HYBEの今後の目標―大きさの問題でなく無視できない存在になる、アメリカで存在感のある企業に
HYBEが今後目指していくことについて、パン議長は「大きさの問題ではなく、無視できない存在になろうというのが僕たちの最初の目標だ。集めたレーベルを効果的に活用できる方式、思った以上に多くの企業の買収、投資の発表が年内にあるだろう。それらを通じて、アメリカで存在感のある企業に成長していく計画だ」と述べた。もはや韓国内に目標はなく、アメリカを見ている。
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