JYP株価下落で思うこと―スキズ再契約、VCHA不振（vs KATSEYE）、ITZY/エンミ、NiziU、NEXZの今後

（目次）・TOP
・大黒柱のStray KidsとTWICEに依存しすぎ。後継グループ育成が課題
・米国ガールズグループ・VCHAの不振―TWICEアメリカ版は正解か
・VCHAのライバルのHYBEのKATSEYEは全く違う洋楽路線→両者とも売れないなら米国Gの存在意義が問われる
・ITZYとNMIXXは曲次第、NiziUは日本での地位・稼ぎを維持すべき
・NEXZは韓国での次のカムバが大事/ ソニーは日本でNEXZを本気で売る気があるのか？

最近、K-POPの大手事務所兼レーベルのJYP エンターテインメントの株価の下落傾向が続いていることについての複数の記事を目にした。

BloombergでJYP Entertainment Corp（KOSDAQ035900）の株価の5年チャートをチェックしてみると、確かに2023年6月17日に136,000ウォン、同７月29日に135,000ウォンのダブル・トップ（高値）をつけてから、下落基調に入り、2024年7月3日には54,800ウォンの安値まで低下している（チャートのURL: https://www.bloomberg.co.jp/quote/035900:KS ）。ピークから約60％の大幅下落だ。

筆者は過去に証券アナリスト試験に合格して、日本証券アナリスト協会の検定会員登録をしていたこともあるが、退会してそういう分野とは無縁の日々を送って久しいので、専門家ではない。

それでも、間違いなく言えることは、株価の下落は市場関係者の同社の収益への期待を反映するから、JYPの業績への悲観論が払しょくできていない、ということだ。

ここでは、JYPの株価に関するデイリー新潮の2024年7月12日配信の「『TWICE』『NiziU』を生んだ韓国・大手芸能事務所、株価『6割下落』の申告とK-POP『3.0』の行方」を読んで、共感した部分などを踏まえながら、状況や注目点を整理したい。

まずは、JYPの創業者のJ.Y.Parkことパク・ジニョンの現在の経営上の肩書は、COO（Chief Operating Officer）だという。パク・ジニョンCOOは2024年1月に、日本円にして約6億円を投じて、自社株を購入したという。しかし、そうした株価買い支え策にもかかわらず、現実のJYPの株価は下落を続けた。

大黒柱のStray KidsとTWICEに依存しすぎ。後継グループ育成が課題

足元の株価は、5月後半から下落ペースが小幅になって、上記の7月3日の安値をつけた後は、横ばい圏内の様子見状態になっているようだ。

これはおそらく、看板グループのStray Kidsの7月19日の9thミニアルバム「ATE」でのカムバックでの爆売れの期待と、7月8日に発表された、自身最大規模のワールドツアー「Stray Kids World Tour [dominATE]」の開催による収益期待を反映しているのだろう。

もちろん、Stray Kids当面は大いに稼げるが、長期的にはどうだろう。2017年デビューで、2024年は7年契約の更新時期となる。全員更新するとは思うが、更新契約では今までよりもメンバーの収益の取り分が多くなるだろうから、JYPの稼ぎは少なくなりそうだ。

TWICEにしても、日本のスタジアム公演を含むワールドツアーで今年は稼げるが、長期的には、ガールズグループの宿命として、年齢とともに全盛期から徐々に後退期に向かうだろう。

つまり、JYPの大きな問題は、TWICEやStray Kidsの後継者となる大人気グループが育っていないことだ。

JYPは2023年10月に、ソウル市江東区高徳洞の1万675平方メートルの土地を取得し、2024年5月に地上22階・地下5階の新社屋のデザインを発表した。1階には公園もあり、2028年以降と見込まれる完成の暁には、世界中のファンが訪れる名所となる。

その頃までには、若手グループが、今のTWICEやStray Kids並みのグローバル・スターに成長していてほしいものだ。

米国ガールズグループ・VCHAの不振―TWICEアメリカ版は正解か

足元の業績懸念の1つは、上記のデイリー新潮の記事にもあったが、2024年1月26日に1stデジタルシングル「Girls of the Year」でデビューした、6人組ガールズグループ・VCHA（ヴィチャ）の不振だ。

VCHAは「Nizi Project」と同じ内容のアメリカ版「A2K」で誕生した、さまざまな人種の魅力的なメンバー6人のガールズグループだ。JYPとタッグを組んだ米国レーベルはユニバーサル傘下のRepublic Recordsだ。

VCHAはNiizUのアメリカ版、つまりK-POP米国グループのはずだが、JYPがとった戦略は、普通のK-POP新人と同様の売り込みとTWICEのアメリカ人気の利用だった。

VCHAは韓国の音楽番組に積極的に出演して、パフォーマンスのYouTube動画を世界中のK-POPファンに観てもらうとともに、TWICE先輩のアメリカ大陸ツアーのオープニングアクト（前座）を務めて、TWICEファンの支持を得ようとした。

VCHAの楽曲は、明るく溌剌とした、TWICEやNiziUの路線だ。メンバーは北米出身のいろんな人種の女の子たちだが、やっていることは、いかにもJYPの伝統的ガールズグループっぽい。

こういうのがアメリカの音楽市場でウケるのか、筆者には分からないが、少なくともTWICEがアメリカのBillboard 200で1位を獲れているから、似たような路線をとったのだろう。

筆者はVCHAが米ビルボードのメイン・シングル・チャートのBillboard Hot 100に登場することを期待したが、今のところ登場できていない。HYBEのNewJeansやILLITはチャートインできているのにだ。

VCHAがアメリカで売れていないとなると、JYPがオーディション「A2K」やデビュー・プロモーションに投じた巨額のお金が、回収できずにいる、ということになる。

2024年1月26日に公開されたVCHAのデビュー曲「Girls of the Year」のMVの再生回数は、7月12日20時時点で882万回で、3月15日公開の「Only One」のパフォーマンス・ビデオの再生回数は613万回だ。MV広告が含まれているかどうかは分からないが、広告なしだとしても、JPYとしては満足できる数字ではないだろう。

それ以降、新たな作品の発表がない。不安に追い打ちをかけるように、3月11日に、最年少メンバーの韓国系アメリカ人のケイリー（14）が、健康上の理由で活動休止する、との発表があった。

VCHAのライバルのHYBEのKATSEYEは全く違う洋楽路線→両者とも売れないなら米国Gの存在意義が問われる

では、ライバルのHYBEの米国ガールズグループは、売れているだろうか？　HYBEの米国オーディション番組「The Debut: Dream Academy」で誕生したガールズグループ・KATSEYE（キャッツアイ）の1stシングル「Debut」が2024年6月28日（金）13時にリリースされた。

HYBEと組んだ米国レーベルはユニバーサル傘下のGeffen Recordsで、KATSEYEのデビュー曲のサウンドは、音だけ聴くと、K-POPとは思えない、洋楽のヒップホップに寄せた、中毒性の高いポップな曲だ。JYPとは全く異なる戦略だ。

KATSEYEが米国でどれだけ売れているのか、筆者には分からない。6月28日にYouTubeのHYBE LABELSチャンネルに公開された、デビュー曲「Debut」のMVの再生回数は、7月12日22時時点で351万回だ。2週間でこの数字は、HYBEとしては満足のいくものではないだろう。

HYBE AMERICAは2023年に赤字だったが、KATSEYEに関しては、今のところ、投資回収ができるほど売れている印象はない。

JYPにしろ、HYBEにしろ、韓国拠点の人気グループが米ビルボードのメイン・チャートに登場できるのに、米国拠点グループが登場できないなら、米国拠点グループの存在意義が問われることになりかねない。

ITZYとNMIXXは曲次第、NiziUは日本での地位・稼ぎを維持すべき

一方、JYPの韓国のTWICEの後輩ガールズグループは、正念場を迎えていると思われる。2019年にデビューしたガールクラッシュ路線のITZYは、BLACKPINKのようなレジェンドになる以前に、差別化が上手く行かず、SMのaespaやHYBEのSOURCE MUSICのLE SSERAFIMに抜かれてしまった。

それでも、体調の問題で活動休止していたリアが回復して次のカムバックで完全体として活動できる見通しとなった。あとは、良い曲に恵まれるかどうかが、生命線だろう。

2022年デビューのNMIXXについては、TWICEやITZYとは違った斬新な音楽性と高い歌唱力が魅力だが、こちらも良い曲に恵まれるかどうかに、かなり影響されると思われる。

日本グループのNiziUは、XGやME:Iといったライバルが出現したことで、岐路に立ったが、最新曲「RISE UP」ではキュート路線からカッコいい路線にイメチェンしてきた。

メンバーたちは海外活動の拡大を望んでいるかもしれないが、JYPの業績の観点からは、日本でトップクラスのガールズグループの地位と稼ぎを失っては困る。海外活動の拡大（ワールドツアー）と日本での地位・稼ぎの維持の両立は、容易ではない。JYP的には、日本での地位と稼ぎを失わない程度の海外活動にとどめるのが、正しい選択だろう。

NEXZは韓国での次のカムバが大事/ ソニーは日本でNEXZを本気で売る気があるのか？

一方、ボーイズグループは、LOUD組がメンバー離脱と増員を経て、予定通り2024年後半にデビューできるかどうかに不安が残る中、先に2024年5月20日に韓国デビューしたNEXZ（ネクスジ）のファンを増やし、順調な活動軌道に乗せることが大事だ。

JYPがNEXZを2PM、GOT7、Stray Kidsに連なる主力ボーイズグループと位置付けているのなら、NiziUと同列に考えるべきではないし、次のカムバックで音盤売上を大幅に伸ばせるように、綿密な戦略が必要だ。

とはいえ、日本出身者7人のグループなので、NEXZの8月21日の日本デビューも大成功してほしいし、日本市場が彼らの強みであるべきだ。

それなのに、NEXZの日本レーベルのソニーは、NEXZの日本デビューEPの発売日に、同じソニーの米津玄師のニューアルバムを、ライブの先行チケット抽選応募特典付きで発売することを決めた。NEXZがデビュー作で1位が獲れなくてもいい、あるいは1位は無理そう、と判断したのだろうか。

そもそも、ソニーは本気でNEXZを日本で売る気があるのだろうか？ HYBE＆ユニバーサルが、＆TEAMをガンガン日本で売り出したように、JYP＆ソニーもNEXZをしっかり日本で売ってもらいたい。

*後続記事:
2024年7月18日付　Stray Kidsの8人のメンバー全員がJYPと再契約、カムバック前日の予想より早い発表で円満PR

*参考:
2023年1月30日付　Stray Kids人気曲・おすすめ曲ベスト20（2023年1月版）

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*Stray Kidsの2024年7月19日（金）13時発売の9thミニアルバム「ATE」は、タイトル曲「Chk Chk Boom」をはじめ、「MOUNTAINS」「JJAM」「I Like It」「Runners」「また夜」「Stray Kids」「Chk Chk Boom (Festival Ver.)」の全8トラックを収録。アルバムタイトルについては、幸運をもたらすフォーチュンクッキーブランド「ATE」というストーリーが、トレーラーで示された。

* Stray Kidsの2024年9月18日（水）発売のLIVE Blu-way「Stray Kids 5-STAR Dome Tour 2023」は、2023年10月の初の東京ドーム公演の模様を映像パッケージ化。60Pライブフォトブック付きでBlu-ray2枚組の完全生産限定盤と20Pフォトブック付きでBlu-ray1枚の通常盤初回仕様の2形態で発売される。Disc1は両形態共通でライブ本編を収録し、完全生産限定盤のDisc2は特典映像を収録。完全生産限定盤にはオリジナルフォトカード（ソロ16枚セット）、ポストカード1枚（完全生産限定盤ver.）、メンバーサイン＆メッセージプリント入りのオリジナル銀テープおよびオリジナルバルーンが封入される。通常盤は初回仕様のみ、連結オリジナルフォトカード（ソロ8枚）、スペシャルメンバーステッカー、ポストカード1枚（通常盤ver.）が封入される。

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*オリコンでは「積み」の間引きを行っているので、確実にカウントしてもらうために、1会計3枚以内に分けることを推奨する。

*「Nizi Project Season2」で誕生したJYPエンターテインメント所属の7人組ボーイズグループ・NEXZ（ネクスジ）の日本デビュー作の日本1st EP「Ride the Vibe (Japanese Ver.)/ Keep on Moving」が2024年8月21日（水）発売。全形態共通で「Ride the Vibe (Japanese Ver.)」「Keep on Moving」「Miracle」の3曲が収録され、初回限定盤BとデジタルEP (Special Edition)のみにボーナストラックとして「Here & Now」が追加収録される。

CDパッケージは16Pフォトブック（Type A）とBlu-ray付きの初回限定盤A（税込定価3,600円）、24Pフォトブック（Type B）と三つ折りNEXZINE付きの初回限定盤B（税込定価2,600円）、CDのみの通常盤（税込定価1,600円）、7人のメンバー別・完全受注生産で独自の特典付きのファンクラブ会員限定NEX2Y盤（税込定価2,200円）の計10形態で販売。

初回限定盤AのBlu-rayにはジャケット撮影メイキング映像、「Ride the Vibe (Japanese Ver.)」のパフォーマンス・ビデオおよびメイキング映像と同曲のレコーディング・メイキング映像を収録し、フォトカードA（ソロ全14種よりランダム2枚）、ミニNEXZシール（ソロ全7種よりランダム1種）、シリアルナンバー2口を封入。初回限定盤BのCDにはボーナス・トラックを追加収録し、人生4カット（ソロ7種よりランダム1種）、フォトカードB（ソロ全7種よりランダム1枚）、シリアルナンバー1口を封入。

通常盤はブックレットが付き、初回仕様のみフォトカードC（ソロ7種よりランダム1種）とシリアルナンバー1口を封入。ファンクラブ会員限定NEX2Y盤には、メンバー別7形態それぞれに、ブックレット、当該メンバーの両面フォトカード（メンバー別全2種よりランダム1種）、当該メンバーのアザージャケット2枚、当該メンバーの手書きレターを封入。

初回限定盤A・Bおよび通常盤初回仕様に封入されるシリアルナンバーを用いて、2024年10月5日（土）に千葉・幕張メッセ展示ホール1、10月6日（日）にインテックス大阪2号館で開催されるメンバー個別ハイタッチ会かメンバー全員お見送り会への抽選招待、またはメンバー全員直筆サイン入りポストカード（100名様）かメンバー手作りオリジナルサイン＆メッセージ入りミニ色紙（各メンバー1名様のみ）の抽選プレゼントに応募できる。

ファンクラブ会員限定NEX2Y盤はSony Music Shop限定で、第1回応募期間（6月21日（金）23:59まで）には2024年10月5日（土）に千葉・幕張メッセ展示ホール1、10月6日（日）にインテックス大阪2号館で開催のメンバー個別サイン会の抽選招待特典付き商品を、第2回応募期間（6月24日（月）10:00～7月2日（火）23:59）には直筆サイン入りチェキ（各メンバー4名様）の抽選プレゼント特典付き商品を販売する。

ストアごとに異なる先着外付け特典が付く。1形態購入で、Amazon.co.jpではメガジャケ、楽天ブックスではアクリルキーホルダー（全7種からランダム1種）、TSUTAYAではアナザージャケット（全7種からランダム1種）、ネオ・ウィングではスマホサイズステッカー（全7種からランダム1種）が付く。