K-POP: BTS

HYBEが疑惑否定もARMYが『我々はHYBEではなくBTSを支持する』/ HYBE前に葬儀花が並ぶ炎上事態

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HYBEがBTSに関する音源買占め、瞑想団体との関係性などの疑惑をすべて否定、法的措置に動く
BTS音源買占め疑惑とは? ―2017年の訴訟沙汰が蒸し返される
HYBEの前身BigHitのBTS音源買占め疑惑で、政府・文化体育観光部が重い腰を上げ調査に動く方針を示唆
ARMYがついにHYBEに抗議『我々はHYBEではなく、BTSを支持する』

小さな中小音楽事務所から世界的巨大エンタメ企業への奇跡の成長を遂げたHYBEが揺れている。ついこの間まで無敵で、我が世の春を謳歌していたのに。一寸先は闇とはこのことか、と思わせる。

HYBEは音源買占めなどのさまざまな疑惑を全否定し、BTSの虚偽の事実の流布や誹謗中傷に断固法的措置をとると表明した。もっともだ。だが、若干の違和感を覚えたのは、今問われているのはBTSの問題ではなく、HYBEの問題なのに、BTSを主体にしているところだった。これをARMY(BTSファン)は見逃さなかった。「BTSを盾にするな!」だ。

筆者が個人的に思い出したのは、日本の2016年初めのSMAP騒動で、「ジャニーズのグループは好きだけど事務所のやり方は嫌い」というファンが出現したことだった(当時筆者もそれに近かった)。巨大事務所がメディアをコントロールしようとするのは日本も韓国も同じだが、韓国のファンは日本のファンよりもはるかに行動的だ。

この大波乱がどう着地して行くのか、目が離せない。

HYBEがBTSに関する音源買占め、瞑想団体との関係性などの疑惑をすべて否定、法的措置に動く

兵役中のワールドスター・BTS(防弾少年団)の所属事務所であるHYBEのBIGHIT MUSICは2024年5月2日にファンコミュニティー・プラットフォームのWeverseで、韓国語と英語で「アーティストの権利侵害への法的措置のアップデート」と題する声明文を発表した。

その中で、事務所はBTSに関する買占め、コンセプト盗用、瞑想団体のダンワールドや他のカルト集団との関係性への最近の疑惑は全て事実ではないと言明し、間違った噂や情報を広めてBTSの名誉を傷つけたネットユーザーに、一切の温情なしで法的措置をとる、と述べた。

補足すると、まず、BTSの7人中ジンを除く6人が通信制のグローバルサイバー大学(正規の学士号取得可能)を卒業したが、その大学が瞑想団体のダンワールド(Dahnworld)と近しい関係なのではないか、との疑惑の声もネット上に上がっていた。ただし、同大学側は、特定の団体と関係はない、と疑惑を否定していた。もちろんHYBEも関係を否定した。

BTS音源買占め疑惑とは? ―2017年の訴訟沙汰が蒸し返される

「買占め」疑惑とは、HYBEの前身のBigHit Entertainmentが、過去にBTSのために「音源買占め」マーケティングを行ったのではないか、との疑惑の声が一部で上がっていたことを指す。きっかけは、BigHitがマーケティング協力会社から2017年に脅迫されて訴訟を起こした件が、蒸し返されたことだ。

よろず~の2024年5月1日配信の記事「BTS 7年前の事件で判決文流出騒動 HYBEは『買い占めマーケティング』否定も一部で消えぬ疑念」が、BigHitの音源買占め疑惑のきっかけとなった脅迫訴訟事件を解説している。

その記事によると、BigHitがマーケティング協力会社に総額5,700万ウォン(約570万円)を支払ったことについて、BigHitは違法(買占め)マーケティングに関する脅迫を受けてその金額をだまし取られたと主張し、1審では認められて協力会社代表に懲役1年の実刑判決が出たが、2審では1審の判決が破棄されて、罰金300ウォン(約30万円)にとどまったという。

その判決文に「被害者(BigHit)が便乗してマーケティングを行い、脅迫の口実を与えた過失もある」と明記されていたため、音源買占めが実際にあったのではないか、との疑念の声が一部で上がった。

しかし、BigHitは2017年の判決当時、「“不適切なマーケティング活動”は犯人(協力会社)の一方的な主張であり、便乗マーケティングは通常のオンラインバイラルマーケティングを意味する」と述べていた。つまり、BigHitは音源買占めではない、通常のマーケティングを行っていただけ、とのことだ。

この脅迫訴訟事件に関し、韓国メディアのCBSノーカットニュースがHYBEに、「違法行為がなかったとしたら、なぜ5,700万ウォンという大金を送金したのか」などの質問状を送った。世間的にも、後ろめたいことがないなら、なぜBigHitは脅迫してきた会社に、大金を払ったのかが、最大の疑問だろう。

しかし、HYBEは送金の理由については答えず、一部で提起された疑惑は全く事実ではないし、悪質な誹謗・デマに対しては厳重に対応する、と述べたという(デバグの2024年5月1日14:15配信の「“買占め行為ないなら、なぜ送金?”『BTS曲サジェギ(買占め)』判決文、HYBE釈明に疑問『いちいち回答しない』」を参照)。音源買占めをしていない、というHYBEの言葉を信じたい。

HYBEの前身BigHitのBTS音源買占め疑惑で、政府・文化体育観光部が重い腰を上げ調査に動く方針を示唆

アーティストの音楽作品の買占め疑惑と言えば、日本ではかつてのJ-POPのCD全盛期に、大手レコード会社が、オリコン1位を獲るためなのか、あるいは「レコード大賞」と獲るためなのか、自社の人気アーティストのCDを大量購入している、との疑惑が持ち上がったことがあった。

だが、その疑惑を知った日本人の多くは、驚きあきれたものの、アクションを起こすことはなかった。そもそも日本では、レコード会社による自社作品の大量購入を禁止する法律なんて、聞いたことがない(筆者が知らないだけ?)。CDが爆売れして「レコード大賞」を獲ったとしても、多くの日本人は「レコード大賞」に権威があると思ってもいない。

しかし、韓国では「音楽産業振興に関する法律第26条」で、販売量を上げる目的でアルバムや音源を不当に購入する買占め行為は違法とされている。買占め規制は2016年9月23日から施行された。

アーティストの音源成績やアルバム音盤の販売量は、音楽番組ランキングでの栄誉ある1位獲得のみならず、日本と違って重視されている音楽授賞式にも影響する。日本と違って、音楽受賞式に権威や信頼があるから、世論が大騒ぎするのだろう。

韓国では過去のBigHitによるBTSの音源買占め疑惑について、政府の文化体育観光部(日本の文部科学省みたいな省庁)に苦情が寄せられ、同部の関係者が「傘下の韓国コンテンツ振興院で該当苦情を把握した後、調査に着手するだろう」とコメントした(前出のデバグの記事を参照)。

良くも悪くも、韓国では世論が日本よりも影響力を持っている。大統領府にはオンラインで個人の請願受付があって、1つの項目の請願数が一定数を超えると、政府が対応しなければならないという。BigHitによるBTS音源買占め疑惑についても、文化体育観光部が重い腰を上げて調査を行う可能性が出てきた。

BigHitが買占めをしなかったことが証明されるなら、調査があっても構わないだろう。ただ、公訴時効が過ぎている模様なので、大した調査にはならないのではないか、という気がする。

ARMYがついにHYBEに抗議『我々はHYBEではなく、BTSを支持する』

こうした事態に、ついにBTSの韓国ARMY(ファン)の有志集団が立ち上がり、2024年5月3日(金)に韓国の主要新聞の1つである中央日報に全面広告の声明文を掲載し、「我々はHYBEではなく、BTSを支持する」と宣言した(中央日報の2024年5月3日12:00配信の「『BTSを盾にするなんて』・・・HYBEとミン・ヒジンの争いにARMYが怒り」を参照)。

その声明文の中で韓国ARMYは「HYBEのパン・シヒョク議長(会長)、パク・ジウォン代表(CEO、最高経営責任者)は、所属事務所の対内外の否定的な懸念にBTSを盾にする『言論プレイ』を中止せよ」とも述べた。

さらに、韓国ARMYはBTSへの攻撃を収拾させ、即時法的措置と進行状況を知らせるよう求めるとともに、「所属アーティストを保護しない所属事務所は存在の理由がない。所属事務所の義務を履行しないことは通常契約解除の要因になり得ることを我々は知っている」と述べた。

この韓国ARMYによるBTSの事務所(BIGHIT MUSICおよびその親会社のHYBE)への批判を見て、ジャニオタ出身の筆者は、かつて2016年初めのSMAP騒動勃発後に一部ジャニーズ・ファンが「アーティストは好きだけど事務所(ジャニーズ事務所)は嫌い」との心境を漏らしていたことを思い出した。当時筆者もその心境に近かった。

日本では当時、ジャニーズ事務所がマスコミをコントロールして、自分たちに都合の悪い報道をさせなかったし、テレビなどがジャニーズに忖度していたことは、ファンでも知っていた。だが、日本政府を見ても、世論などお構いなしでマスコミをコントロールしているから、一個人が不満や怒りを感じても、どうせ何も変わらない、という諦めがはびこっていた。

ここ数年のK-POPで見ると、BTSの大成功でHYBE忖度が韓国はもちろん日本でも広まりつつあるな、と感じることもある。今年4月22日にミン・ヒジンとHYBEの内紛が発覚するまでは、HYBEにネガティブな記事を見ることは、ほぼなかった気がする。

今でも、HYBEアーティストを取り上げる主要メディアやHYBEアーティストの出演を望むテレビ局は、HYBEにネガティブな話はほとんど取り上げない。これは、HYBE以外の有力芸能事務所についても同じだ。

しかし、少なくとも韓国ではHYBEへの風当たりが強まっているようだ。株価の下落が投資家のHYBEに対する期待悪化を如実に示しているだけでなく、HYBEの社屋前にファンからの葬儀用の花がずらっと並ぶ異常事態になっている(日テレNEWS NNNの2024年5月3日配信の記事を参照)。

これも、日本でSMAP騒動勃発直後に、当時ジャニーズ事務所で最大の権力者とみられていたメリー喜多川・ジャニーズ副社長あてに、弔電もしくはご逝去お悔やみの手紙を送りつけたファンがいたことを思い出させる(もちろんメリー氏は当時死亡しておらず現役バリバリのジャニーズ首脳だった)。

短期間で急激に成長して業界最大手・世界的企業になったHYBEの中身・体制が、自社の成長の猛スピードについて行けていないから、ほころびが出始めたような気もする。

筆者は今でもHYBEの複数のアーティストのファンクラブに入っていて、言わば“HYBEの犬”かもしれないが、HYBEが大揺れしていて批判やアンチが増えているのを見ると、以前のように純粋にHYBEアーティストの音楽が楽しめなくなっている。そういうHYBEファンは多いのではないか。

一部のARMYはBTSはHYBEから独立すべきと主張しているようだが、BTSメンバーたちは入隊前に全員、HYBEとの契約更新(7年とみられる)をしたばかりだ。また、入隊前のメンバーの発言からは、大企業となったHYBEのやり方に不満が全くないわけもはなさそうだとうかがえたが、デビュー前から苦楽を共にしたパン・シヒョクPDとの絆はあるだろう。

ところで、BIGHIT MUSICは新たなボーイズグループ発掘のオーディションを実施すると発表した。でも、じゃあ、Trainee Aは何だったの、と悲痛な声を上げるファンもいる。審査のための気が遠くなるほど猛練習を重ねたのに、デビュー目前でとん挫・解散となったTrainee Aの7人のうち、ジフンはPLEDISに拾ってもらえて、TWSとしてデビューできた。だが、ほとんどのメンバーは退社するしかなかった。

東京・渋谷の街中で、SEVENTEENの発売されたばかりのベストアルバムのCDが、封入特典が抜き取られた状態で、「ご自由にどうぞ」のメッセージとともに、段ボール箱で大量に捨てられているのが発見された(朝鮮日報の記事)。ファンが勝手にしたことと言われればその通りだが、事務所が沈黙を貫いているのも、何だかなあ、と思う。

なお、HYBEの2024年1~3月期の連結決算では、売上高は前年同期比12.1%減の3,609億1,800万ウォン(約397億98万円)、本業のもうけを示す営業利益は同72.6%減の143億8400万ウォン(約15億8,224万円)、当期純利益は同87.5%減の28億7,700万ウォン(約3億1647万円)だった。BTSの入隊と人気アーティストのカムバックなしの影響で大幅減収減益となったようだが、それでもこれまで積み上げた内部留保が潤沢だから危機感はないだろう。

大出世して我が世の春を謳歌し、お金が余って調子に乗り過ぎたHYBEが、人間味や謙虚さを取り戻す時間が必要なのかもしれない。


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