(目次)・TOP
・K-POPの世界音盤販売高は2023年がピークで2024年はバブル崩壊
・日本のK-POPブームも2023年がピークで、2024年に緩やかな下降もしくは停滞局面入り
・K-POP神話崩壊―絶対的なスキル優位性はなくなった、日本にもレベルの高い人材はいる
・K-POP口パク問題←日本だけではなかった
・日本人だって世界で活躍できるはず→日本の音楽業界は変化せよ
・ K-POP銭ゲバ問題―あの手この手の集金・CDを積ませる販促策に、K-POPオタクは疲弊
K-POPのフィジカルアルバム(CD等の音盤)の売上が2023年にピークをつけ、2024年には減少に転じたことは、K-POP界隈では、音盤バブル崩壊として、認識されている。
実は日本でも、K-POPブームが2023年にピークを打って、2024年には緩やかな下降局面、もしくは停滞局面入りしたことを示唆するデータがある。
理由はいくつか考えられる。スキルの絶対的優位というK-POP神話の崩壊、K-POP口パク問題、J-POPアーティストへの期待、K-POP銭ゲバ問題などだ。
K-POPの世界音盤販売高は2023年がピークで2024年はバブル崩壊
韓国のレコード会社・流通会社提供の正味出荷データを集計しているサークルチャート(CIRCLE CHART)が、2024年12月26日に公表した2024年アルバム売上レビューレポートによると、韓国発売のフィジカルアルバム(音盤)の世界での総販売高は、ピークとなった2023年の1億1517万枚から2024年には9,267万枚に減少し、音盤バブル崩壊を裏付けた。
日本のK-POPブームも2023年がピークで、2024年に緩やかな下降もしくは停滞局面入り
日本でもK-POPブームが2023年にピークをつけ、2024年から緩やかな下降局面、もしくは停滞局面に入ったとみられる。
たとえば、ビルボ―ド・ジャパンによる年間フィジカル・アルバム・セールス・ランキングのTop Albums Salesを見ると、アルバムの年間売上枚数TOP20に登場したK-POPアーティストは、2022年の7組から、2023年には14組に増えたが、2023年には11組に減少した(日韓合弁事務所のJO1とINI、JYP日本所属のNiziUを含む)。
アルバムの年間売上枚数TOP20に登場したK-POPアーティストのアルバムの売上枚数の合計は、2023年の669.5万枚から2024年には409.3万枚に減少した。TOP20の売上枚数合計に占める割合も、2023年の60.3%から2024年には48.7%に低下した。
日本の音楽シーンにおけるK-POP勢後退の兆候は、アルバム売上だけではなく、ストリーミングの寄与が大きい総合ソングチャート・Billboard JAPAN Hot 100にも見られる。
Billboard Japan Hot 100の年間ランキングに登場したK-POP楽曲の数は、2023年の9作品から、2024年には6作品に減少した。
もちろん、日本のK-POPファンがいなくなるわけではなく、日本の音楽シーンの1つのジャンルとしては続くと思われるが、大ブームは一巡し、厳選されるようになるのではないか、と思われる。
K-POP神話崩壊―絶対的なスキル優位性はなくなった、日本にもレベルの高い人材はいる
以下は、なぜ日本におけるK-POPブームがピークアウトしてしまったかについての、筆者の個人的な考えだ。どこまで当たっているかは分からないが、筆者および周囲のK-POPファンの実際の行動にも、ある程度基づいている。
なお、K-POPといっても、日本で普及しているK-POPアーティストのはほとんどはK-POPアイドルなので、ほぼK-POPアイドルについての考察となる。
第一に、K-POP神話の崩壊だ。つまり、K-POPアイドルは、日本のアイドルよりもスキルが絶対的に凄い、という認識が崩れた。これは、日本の一部アイドルのスキルのレベルアップと、K-POPアイドルの一部への失望の両方による。
コロナ禍前の2017~2019年にK-POPが日本進出を猛烈に進めていた頃には、K-POPアイドルの歌やダンスのレベルは、日本のアイドルよりもかなり高い、という神話的な雰囲気があった。
しかしその後、日本のダンス&ボーカルグループの中には、ハイレベルのスキルの持ち主もいることが、分かってきた。
たとえば、近年ダンスコンテスト的な番組やコラボ企画が増えているが、実は日本のダンスのレベルが非常に高いことが、一般視聴者にも知られるようになった。
BE:FIRSTのSOTAのように、ダンスの世界大会で優勝したメンバーもいるし、LDHの若手に驚異的なダンスの達人がいることも、認知されるようになった。
ボーカルも然り。Da-iCEの花村想太のように、日本が誇る卓越した歌唱力の持ち主もいる。
かつては、ジャニーズは歌やダンスが下手だと思っている人も多かったと思われるが、最近ではジャニーズの中にも、Travis Japanのようにダンスが上手なグループや、Snow Manのラウールのようなダンスの達人もいる。SixTONESの京本大我のような、歌唱力の非常に高いメンバーもいる。
問題を挙げるとすれば、日本のアイドルグループもしくはダンス&ボーカルグループには、高い歌唱力、高いダンススキル、素晴らしいビジュアルの3つの資質をすべて兼ね備えた人材は、なかなかいない。だが、これはK-POPの多くのグループにも当てはまる。
近年の韓国のオーディション番組で誕生したグループの中には、かなりスキルのレベルの低いところもあった。実力が売りの韓国なのに、あの音痴同然の子がデビュー組に入るんだ、と唖然とさせられた。
また、実力が過大評価されて爆売れし、世界の音楽ファンが観る大きなステージで、酷評されたK-POPグループもあった。
なお、日本の男性ダンス&ボーカルグループの一部メンバーのスキルの高さを認めつつも、彼らのグループのファンにならないアイドルオタク(女性)の言い分は大体、ビジュアルがイマイチだとか、曲が苦手・刺さらない、というものが多い。K-POP大手事務所はそこをよく心得ていて、ビジュアルの良いメンバーを揃え、中毒性のある楽曲を用意する。
K-POP口パク問題←日本だけではなかった
第二に、日本の視聴者の間に「K-POPは口パクが多い」という認識が広まりつつあることも、K-POPブーム一巡の一因と言えるかもしれない。
日本の視聴者の多く、特に年齢が高めの視聴者は、音楽番組で口パクするアイドルを軽蔑している。音楽番組で口パク疑惑が浮上すれば直ちに、Xで「〇〇口パク」がトレンド入りしがちだ。
しかし最近では、実は韓国の音楽番組でも、アイドルの口パクが決して珍しくないことが、分かってきた。これも、K-POP神話の崩壊の1つの例だ。
厳密には、日本でも韓国でも完全口パクのグループもいれば、録音音源に生歌唱を加えた「かぶせ」のグループもいるし、完全生歌唱のグループもいる。
「口パク」を用いる理由としては、元祖・口パクのジャニーズの光GENJIは「ローラースケートしながら歌えないから」だったが、SMAPの中居正広などは「歌が下手だから」だった(中居の口パクは、グループ解散後に本人が笑えるネタとして明かしている)。
最近では、激しく踊りながら歌うグループが、安定した歌唱を届けるために「かぶせ」を用いる例が多い。韓国ではダンスの完璧さが優先され、中には完全生歌のグループもいるものの、音楽番組での口パクや「かぶせ」は普通のことであり、批判は聞いたことがない。
しかし、日本の多くの視聴者の価値観は違う。音楽番組なのにダンス優先はおかしいだろ、生で歌え、となる。当然、生歌は軽蔑されるが、「かぶせ」も支持されにくく、いつでも完全生歌唱を宣言しているグループが支持されやすい。
例えば、BMSGのBE:FIRSTや、これからデビューするちゃんみなプロデュースのガールズグループ・HANAは、常にダンスしながら完全生歌唱だ。
日本人だって世界で活躍できるはず→日本の音楽業界は変化せよ
第三に、なんだかんだ言っても、日本人はオリンピックでは日本選手を応援するように、日本のアーティストに世界で頑張って認められるようになってもらいたい、という気持ちがある。
何年か前までは、「K-POPにできても、J-POPはスキル不足とか忖度とかで無理そう」という認識だった。
しかし、今ではJ-POPのダンス&ボーカル以外では、世界に進出し始めたアーティストもいる。ダンス&ボーカルグループについても「K-POPにできるのに、何でJ-POPにできないのか。できるようになれ!」という認識に変わっている。
J-POPのダンス&ボーカルグループがK-POPに後れをとっているのは、楽曲やパフォーマンスの問題だけでなく、アーティストの周囲の作り手側(事務所、レーベル、業界)の知見・能力ややる気の問題によるところも、大きいと思われる。
優秀な人材が集まりにくい業界には理由があり、子供たちもそれに気づいている。
2010年代後半から2020年代半ばにかけて、日本の中学や高校をやめて、渡韓してK-POP事務所の練習生になる子供たちが続出した。理由は、K-POP事務所に行ったほうが、世界で活躍できると信じているからだ。
その一方で、韓国で何年も練習生生活を続けた挙げ句、デビューできなければ、あるいは中小事務所からデビューして売れなければ、挫折して帰国することになる。挫折した時には年齢も高く、学歴もないとなれば、新たなキャリアを踏み出すことすら難しくなる。だから、韓国ではK-POP練習生は、憧れの職業ではなくなりつつある。
日本の子どもたちが中学高校をやめて、渡韓する道を選ぶ必要がないような、魅力的な日本の音楽業界を作るべきなのだ。
日本でしっかり高校や大学での勉強と、ハイレベルなアーティスト活動が両立できて、世界進出も可能な、そんな音楽業界になるべきだ。
なお、日本の芸能界もいろいろ問題があるが、K-POP業界もいろいろある。特に、2024年春以降長期化しているHYBEのお家騒動のゴタゴタは、純粋にファンが楽しめない雰囲気を作っており、2024年のK-POPの下降局面の一因となったとみられる。
K-POP銭ゲバ問題―あの手この手の集金・CDを積ませる販促策に、K-POPオタクは疲弊
第四に、K-POPは銭ゲバで、日本人をカモにしているという見方があり、実際に、金銭的に疲弊しているK-POPオタクもいる。
K-POPの推し活には、たとえばSTARTO ENTERTAINMENT(スタエン、旧ジャニーズ)のアイドルの推し活よりも、お金がかかりがちだ。ライブのチケット代も割高で、CDを積ませるように誘導するプロモーションも多い。
たとえば、日本で2025年初め時点で最も売れているアイドルグループはSTARTO ENTERTAINMENT(スタエン、旧ジャニーズ)のSnow Manだが、彼らのドームツアーのファンクラブ会員のチケット価格は9,700円均一(税込)だ。
しかし、K-POPの人気グループのチケットは、来日する渡航費などのコストがあるから仕方がないとはいえ、ファンクラブ会員向けで1万2,000円~1万6,000円程度が多く、かなり割高だ。もっと高額なアップグレード席もある。
K-POPが銭ゲバ・集金装置と揶揄される最大の理由は、ファンにCDを積ませる猛烈特典商法を仕掛けてくるからだろう。
初めてK-POPアイドルのファンになった人は、CDに付けられた対面イベントへの抽選招待特典をはじめ、ラッキードロー(オンラインくじ)イベント、メンバー誕生日記念グッズなど、ありとあらゆる「集金」を、仕掛けてくることに驚く。
スタエン(旧ジャニーズ)の人気グループの場合は、毎回のCDリリースでは、3形態売りが標準で、よほど売れていないグループ以外は、対面イベント特典を付けることは、まずない。ファンは最大でも各形態1枚ずつ、合計3枚のCDを買うのみだ。
しかし、K-POPアイドルの多くは、CDリリースに際して、多形態売りは当たり前で、メンバーのソロ写真絵柄のカードなどのグッズのランダム封入特典や、ストアごとに異なる先着外付け特典だけでなく、アイドルに会えるイベントの抽選招待特典を付けていることが多い。
しかも、1回のリリースにつき、幾つもの対面イベント、たとえば会話しながらのサイン会、ツーショット撮影会、ハイタッチ会や握手会などを開催し、別途オンライントーク会なども開催する。
このため、抽選に当選したいファンの中には、何十枚、あるいは100枚以上もCDを積む人もいる。CD売上でミリオンとかハーフミリオンをプレゼントして推しを喜ばせられると同時に、対面イベントで推しに会える、というのが貢ぐインセンティブになる。
金銭感覚がマヒして、推し活依存症みたいになる人もいる。ある時点で家族が気づいて、歯止めをかけてくれるならいいが、1人で暴走しやすい環境だと、生活が破綻しかねない。
これは、学生などの若いファンだけではなく、日本だけに多いのかもしれないが、40代50代といった、年齢高めのファンも同じだ。
K-POP推し活をしていなければ、しっかり人生設計して貯金も増やせていたはずなのに、食費を切り詰めてまでもK-POP推し活にお金をつぎ込み、貯金はほぼゼロ、となる。年を取って、年金だけでは暮らしていけないと気づいた時に、どうするのだろう。
推しのためにCDを積むことを美徳みたいに言うK-POPオタクもいるが、そんなことをけしかける無責任な大人は、信用すべきではない。
SKY-HIがCDを「積む」ことに警鐘を鳴らしたことは、プラスチックごみという環境問題でもあるし、音楽業界の行き詰まりリスクという業界ライフサイクルの問題でもある。
しかし、それ以上に、冷静な判断力・金銭感覚がマヒしつつあるK-POPオタクに、不健全な推し活ライフを見直すべきだ、というメッセージを送ってくれているのではないか。
日本の音楽ファンは既に、ストリーミング重視になっている。ファンにCDを積ませてCD売上がやたら多いが、楽曲を広く聴いてもらえていないアイドルは、リスペクトされない。
[PR]